親父が、ひょっとして最後になるかも、という桐箪笥を作ったので、写真を撮りました。最近ではまともなものは3年に1本ぐらいしか作らないので。工場がぼろぼろなのがちょっと恥ずかしいのですが、商品に罪はない。
市内のとあるお宅で、娘さんが生まれたときに植えた桐の木を使って、というご注文で、材料支給というやつです。 最近はそんなお宅も少なくなりました。やはり木材屋さんから買ってきた材料と比べるとやや癖はありますが、自宅の庭にあった木となれば、ほかに代えがたい価値がありますよね。 ムクのタンスはびっくりするくらい材料の嵩(かさ)が必要です。心得のある方が製材して野外にさらし、数年間乾燥させてあったからできたことです。
この部分のヒキダシを「オリ」といいます。折り詰めの「オリ」ですね。扉もヒキダシもすべて桐材の、いわゆる「総桐」というやつです。 まあ、いまどき前桐とか三方桐(昔は、目立たない部分にはスギを使ってコストダウンしたのです)なんて、ほとんど作ることはありませんが。
通常は見えにくい場所なのですが、オリとオリの間の板に、白いプチプチがフラッシュに照らされて見えると思います。桐は柔らかくて軽いので普通のビスや釘は効きません。 木の釘と糊とで組み立てていきます。その木の釘のアタマがこのプチプチなのです。
昔ながらの砥の粉塗り、ウズクリ仕上げに、自然オイル(リボス)で仕上げました。灰色に仕上がる「夜叉渋(やしゃしぶ)」という塗りもあるのですが、 骨董っぽくなってしまいますので今回はやめました。金具は金メッキなども多いのですが、仕上げが黄色っぽいということもあり、黒になりました。やや今風になったのではないでしょうか。